代官山蔦屋書店 STATIONERY SALON 第二部インクトレード会で万年筆の新しい楽しみ方を見た。[文具]
代官山蔦屋書店 STATIONERY SALON インクトレード会
代官山蔦屋書店 文具イベント第二部
2016年1月22日18:00〜20:00
会場:GARDEN GALLERY
イベント2日目は昨夜のアーバンな雰囲気とは違う明るくオープンな空間に、これもまた昨夜とは異なる熱い熱気が立ちこめたイベントとなりました。
これが文具のイベント?
まずはじめに解説をしなければいけない事がつぎの点。
・これは文房具のイベントである事。
・インクとは万年筆インクを意味する。
・トレードは文字通り交換を意味する。
つまり本イベントは、万年筆インクを交換するため(だけ)のイベントである。
文房具の広く深い世界
昨夜のレザー文具では、手帳のデザイン・機能性といった製品そのものにフォーカスされた誰にでもわかりやすい(興味はなくても理解・納得できる)内容のイベントでした。
本来文房具は個人が用途(仕事や環境)によって選択し使用する、限りなくパーソナルな実用品で、どちらかというと内側に向うベクトルのツアイテムです。
ところが今回のイベント「インクトレード会」は、個人的趣味・嗜好品であるはずの文房具(万年筆インク)を等価交換しその価値を共有・シェアする、といった日常のなかで消耗品として文房具に接する消費者には、なかなか理解し辛い主旨のイベントといえるでしょう。
ヨーロッパやアメリカでは「ペンショー」という、万年筆のコレクターやバイヤーが集う国際的なイベントもありますが、こちらビジネス的なイベントなので、「インク交換会」とはかなり異質なモノかもしれません。
インクトレード会
さてテーブルに並んだこのツール?
こんなモノや
あんなモノ
で、こんな風になります。
楽しみ方はいたって簡単、会場に集まった人どうしが各自が持ち寄った万年筆インクを相手のインクと交換する。
それだけ・・・です。
???
もちろんルールはあります。
どちらかというと注意事項ですけどね。
・交換は双方合意の事。
・蔦屋書店はトラブルに関して一切関知しない。
といった内容。
会場レポート
18:00の開場前からたくさんの人が集まり、代官山蔦屋書店佐久間さんの挨拶で始まったインク交換会。
それぞれに持ち寄った万年筆インクを披露しながら、インク交換がはじまりました。
中央テーブルのタミヤボトルは、お互い交換したインクを詰めるボトルとして使用されます。
一般の人が見て「これって何につかうの?」と思われるシリンジは、万年筆のインク瓶からタミヤボトルへ移す際に、インクを吸い上げる為のツールになります。
そして水の張ったボウルは、使ったシリンジの洗浄のために用意されています。
参加者の9割は女性でしたが、男性参加者は少ないながら、かなりのヘビーユーザーとお見受けできる方が、自分の持っているインクカラーを集めてたインクノートを持参、カタログのような役割でトレードの際に、実際の色見本として活用されていました。
トークショー
記念トークショーでは、昨日にひきつづき枻出版「趣味の文具箱」清水編集長の司会で、神戸ナガサワ文具センター室長竹内直行さん(神戸インク物語開発社)、PILOTコーポレーション長谷川清美さん、HOKUSHIN co.,Ltd 金敦也さんを迎え、それぞれ万年筆インクに関わる大御所の方々貴重なお話しを・・・
すいません、会場の雰囲気に飲まれてじっくり聴くことが叶いませんでした。
詳しく「趣味の文具箱」次号の誌面で・・・紹介されるはずです。
万年筆インク交換会のメリットとは?
このインク交換に、なぜこれだけの人が集まるのか?
これは最近の万年筆(インク)事情があります。
万年筆が単なる筆記具としてでなく、趣味として一般にも認知された事と、インクに価値が出来た事などが主な要因と思われます。
民間人?から見れば、「万年筆のインクなんて文房具屋さんへ行けばいつでも買うことができるじゃん!」
おっしゃるとおり。
ところが、万年筆インクの世界では、海外の大手ブランドから毎年のように、その年の限定インクが発売されたりしています。
例)エーデルシュタイン INK OF THE YEAR (年度限定インク)
神戸ナガサワ文具センター 絵画シリーズ「フェルメールブルー」他
日本の文房具屋さんでも、そのお店のオリジナルブランドの万年筆インクを発売しています。
例)神戸ナガサワ文具センター「神戸インク物語」シリーズ
静岡BUNGUBOXオリジナルインク
東京カキモリのオリジナルインク
丸善書店アテナインキ
蔦屋書店オリジナルインク、などなど
また、定番として販売されているインクでも、1メーカーから24種類(色)も出ていると全部買いそろえるのは、経済的理由(これが1番か?)収納する場所・物理的理由から困難。
例)PILOT 色雫彩シリーズ全24色
ダイアミン 100色以上
こうした万年筆インクは、その時期・その店舗でしか購入することが出来ないうえに、買いそびれてしまうともう二度と手にすることができなかたっりとか、希少価値・付加価値のようなものが発売と同時にインクにまとわりついて、購買心理を心地よくくすぐってくれるようです。
神戸ナガサワ文具センターの絵画シリーズは、販売が神戸・大阪市内にあるナガサワ文具センターの各店舗と開催される美術展会場に限られ、「フェルメールブルー」「ターナーカフェブラウン」などは、絵画・画家の名前を冠してものはライセンスの問題もあり、販売期間が限定されるものもあります。
ゆえに、万年筆インク愛好家にとって定番インクもさることながら、期間限定・数量限定・店舗限定のインクは、愛好家の心を刺激してやまない魅力的なマジックワードとなり、今回のようなイベントは、より多くの万年筆インクにふれる機会は絶好のチャンスと言えるわけです。
蔦屋書店で開催した意義
インクトレード会(交換会)そのものは東京や大阪など、比較的ユーザー数が多く、万年筆インクがよく流通している(購入しやすい環境)大都市を中心に、文具会・文具オフ会として開催されてきました。
規模としてはあくまで少人数で、SNSのコミュティレベルのオフ会でした。
それが、新しいカルチャーの発信基地とよべる代官山蔦屋書店が主催した事は、インクトレード会が新しい趣味のカテゴリーとして認知されたことの証だと思えます。
(おそらく代官山蔦屋書店のスタッフもかなり勇気が必要だったと思います)
まとめ
会場中央に並べられた写真を見た人は「これって、ホントに文房具のイベント?」って疑問の念を抱くこと間違いなし!
「シリンジ(注射器)」「タミヤのボトル(プラモデルの塗料を入れるボトル)」「水の入った大きなボウル」
これらを使うイベントはなに?TVのバラエティ番組の出題になりそうなツールがでーんと並んだ中央テーブルで繰り広げられたインク交換会。
これほど、インクに対する関心が高いということは、書く事にも興味がある人たちがまだまだ多い証。若者の活字離れがすすむと嘆く新聞や報道をよく見かけますが、こうした文化・趣味が広く拡散されて、書く楽しさを再発見する機会になればと思います。
あらためて文房具の新しいフロンティアを垣間見た1日でした。
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