*

子どもといっしょに読んでほしい「いっぽんの鉛筆のむこうに」[書籍]

公開日: : 最終更新日:2023/04/21 書籍(本・雑誌), 書評

子どもといっしょに読んでほしい「いっぽんの鉛筆のむこうに」


いっぽんの鉛筆が「私たちの手元に届くまで」をめぐる家族のものがたり

えんぴつ


 小学生の頃に誰もが使った筆記具といえば鉛筆だったと思いますが、大人になると途端に使う機会が減った、あるいは使わなくなった筆記具が鉛筆ではないでしょうか?
おとなになった今、改めて手にして見ると、長さ180mmに満たない鉛筆の中に、さまざまなドラマがあることに気付かせてくる絵本がこの「1本の鉛筆のむこうに」です。

絵本・いっぽんの鉛筆のむこうに


 「いっぽんの鉛筆のむこうに」は、児童書で有名な福音館書店から発行されている、いわゆる子どもむけの絵本ですが、詩人でもあり作家の谷川俊太郎さんが、だれにでもわかりやすいやさしく言葉で語りかけてくれます。
絵本の内容は、鉛筆の主原料である黒鉛の採現場スリランカのボガラ鉱山で働くポディマハッタヤさんの仕事とその家族の物語。
そのスリランカから約15000km離れたアメリカ合衆国シエラ・ネバダできこりを営むダン・ランドレスさんとその家族の物語。
鉛筆の軸になる木を日本へ運ぶ、メキシコのコンテナ船ハリスコ号でコックとして乗組員の食事を作るミグエル・アンヘル・シップの仕事とその家族の物語。
そして日本の山形県にある三菱鉛筆株式会社山形工場で働く大河原さん一家の物語。
最後は、川崎市で文房具店を営む佐藤さんの物語。

 1本の鉛筆が、私たちの手元に届くまでの道のりを解説するだけではなく、それらを生業としてそこで生活する人々がいることをしっかり紹介している絵本として、子どもたちや、私のようなおじさんにだって、学び直すことができる内容です。
この本を通じて、世界の文化や、日本と世界のつながりまで、私の暮らしは決してスタンドアローンではなく、常になにかと関わりあっていることを教えてくれています。
余談ですが、この絵本に登場するスリランカのポディマハッタヤさんは2021年新型コロナウイルスでお亡くなりなりました、ご冥福をお祈りします。

鉛筆を再考してみる


 こどもの頃から親しみのある鉛筆も、その材料から私たちの手に届くまでを、あらためて考えると知らないことだらけで、文具に関わる仕事をしている大人として恥じる気持ちがこみ上げてきます。
この「いっぽんの鉛筆のむこうに」は教科書に掲載されていたようで、世代によっては懐かしさをおぼえるひともいるかもしれませんが、筆者は当時の記憶がなくて?今回が初めての出会いになりました。

私たち昭和世代は鉛筆と云えばHBが標準でしたが、近年はBや2Bが一般的になっているようで、若い世代の筆圧低下で濃い鉛筆が好まれているようです。
筆者の場合は別の意味でBや2Bの出番が増えたのは、目に衰えを感じ始めて、濃く太く書いた文字の方が読みやすく感じる様になったからではありますが、たしかに筆圧をかけずに筆記できる濃い鉛筆は楽と感じています。

いまさら鉛筆?というひとにオススメしたいBlackWing鉛筆

今人気のBlackWing


 
 大人になると鉛筆を使う機会が減ったといいましたが、一部にはまた復活したというユーザーも現れ始めました。
今、注目を集めているのがBlackWingという鉛筆は一度姿を消したブランドですが、2010年にアメリカで復刻されて、その独特なデザイン(軸の後ろに平べったい消しゴムが付属している)が、文房具ファンの心をつかみ、ロフトをはじめて多くの文具店の店頭で見ることができます。
見た目のカッコイイよさもさることながら、1本400円前後という価格もまた別の意味で魅力的、トンボ鉛筆のように1ダース買いするには、ちょっと気合いが必要ですが、ばら売りもあるので、興味がある人は一度お試し下さい。

文具愛好家の考察

 仕事で万年筆について記事を書く機会が多く、普段使いの筆記具が万年筆という筆者でしたが、ある日実家の整理に行った際、母が以前に使っていた大量の鉛筆が出てきて、これは使わないといけないと感じてから、鉛筆を中心にした筆記生活?が始まりました。
鉛筆の素晴らしさは、細い文字を書きたければ、細く削ればいいし、太い文字を書きたいなら芯先を削らなければいいと、1本の鉛筆で何通りの使い方ができます。
(市販の鉛筆削りに芯先の長さを調整する機能がある鉛筆削り器もあります)
また、少し時間の余裕がある時に、肥後守(小型の刀)を使って鉛筆を削っていると、なんだか心が落ち着くという効果も得られました。
1冊の絵本から、鉛筆愛が再発するという、想定外の事態に発展してしまいましたが、黒鉛や木軸で作られた鉛筆は、素朴で地球の営みを感じる事ができる筆記具だとあらためて教えられた気がしています。

Amazonで購入できる「いっぽんの鉛筆のむこうに」

BlackWing


関連記事

Kindle Voyage 開封の儀!旅立ちの書[ガジェット]

Kindle Voyage 開封の儀! モノを買って一番の興奮は、商品のパッケージを開ける瞬間

記事を読む

文具の老舗・銀座伊東屋の本が出た「文房具BETTER LIFE」[書籍]

銀座伊東屋・文房具BETTER LIFE 明治37年東京銀座で111年、日本の文房具店の看

記事を読む

ちょっとありえない?天狼院書店の5つの魅力

天狼院書店 2013年9月、東京池袋・雑司ヶ谷にオープンした書店「天狼院」 なんともいかめし

記事を読む

「トヨタの自分で考える力」を読んだらレベルアップ!君も勇者になれる!?[書評]

トヨタの自分で考える力 原マサヒコ著 日本を代表する企業TOYOTAには、さまざまメディア

記事を読む

サライの檸檬万年筆と梶井基次郎[文具]

雑誌サライ付録の檸檬万年筆と梶井基次郎 月刊雑誌「サライ(小学館)」に「ミニ檸檬万年筆」の

記事を読む

見せてもらおうか、SIMカード付き雑誌の性能とやらを(笑)「デジモノステーション」SIMCARD付き雑誌[書評]

デジモノステーション1月増刊号「SIM PERFECT BOOK」 出版業界でも初とな

記事を読む

いずパパ流”楽学”読書術 #大人の読書

出版不況といわれる今日、それでも毎日*200~400点もの書籍の新刊が書店の店頭へ運ばれていきます、

記事を読む

趣味の文具箱vol.37 隠れた名品をめぐる文具な旅へ[文具]

趣味の文具箱vol.37 隠れた名品をめぐる文具な旅へ 趣味の文具箱は枻(えい)出版が発行

記事を読む

DIME5月号でスマホカメラは200倍楽しくなる![BOOK]

DIME 5月号のスマホライフを200楽しくするスマホレンズつき ビジネスマン向け情報誌DIME

記事を読む

2016年 手帳選びはこの1冊!手帳大好きさんが監修、かつてない?手帳事典[書籍]

手帳事典〜自分に合った1冊が見つかる!手帳選びの”最強”指南書 今年も文具店・書店・そしてLOF

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

信州上田のそば屋「刀屋」2023年版[旅]

信州上田にあるそばの名店「刀屋」 信州長野県、長野新幹線(現

これば使える、ダイソーのラベルシール普通紙名刺サイズ[文具]

侮れない100円均一ショップ「ダイソー」の「ラベルシール普通紙名刺サイ

なにげに便利、左右効き手対応定規[文具]

なにげに便利な、共栄プラスティックの左右効き手対応定規 街に

仏生山温泉・関西から行く18きっぷの旅[旅]

18きっぷでいく高松うどんと温泉の旅 うどん県高松 香川

ノートと一体化できるノック式ボールペンPitanが登場[文具]

ノートとペンを一体化!ゼブラのPitan 筆記具の大手メーカーゼ

→もっと見る

PAGE TOP ↑