子どもといっしょに読んでほしい「いっぽんの鉛筆のむこうに」[書籍]
子どもといっしょに読んでほしい「いっぽんの鉛筆のむこうに」
いっぽんの鉛筆が「私たちの手元に届くまで」をめぐる家族のものがたり
えんぴつ
小学生の頃に誰もが使った筆記具といえば鉛筆だったと思いますが、大人になると途端に使う機会が減った、あるいは使わなくなった筆記具が鉛筆ではないでしょうか?
おとなになった今、改めて手にして見ると、長さ180mmに満たない鉛筆の中に、さまざまなドラマがあることに気付かせてくる絵本がこの「1本の鉛筆のむこうに」です。
絵本・いっぽんの鉛筆のむこうに
「いっぽんの鉛筆のむこうに」は、児童書で有名な福音館書店から発行されている、いわゆる子どもむけの絵本ですが、詩人でもあり作家の谷川俊太郎さんが、だれにでもわかりやすいやさしく言葉で語りかけてくれます。
絵本の内容は、鉛筆の主原料である黒鉛の採現場スリランカのボガラ鉱山で働くポディマハッタヤさんの仕事とその家族の物語。
そのスリランカから約15000km離れたアメリカ合衆国シエラ・ネバダできこりを営むダン・ランドレスさんとその家族の物語。
鉛筆の軸になる木を日本へ運ぶ、メキシコのコンテナ船ハリスコ号でコックとして乗組員の食事を作るミグエル・アンヘル・シップの仕事とその家族の物語。
そして日本の山形県にある三菱鉛筆株式会社山形工場で働く大河原さん一家の物語。
最後は、川崎市で文房具店を営む佐藤さんの物語。
1本の鉛筆が、私たちの手元に届くまでの道のりを解説するだけではなく、それらを生業としてそこで生活する人々がいることをしっかり紹介している絵本として、子どもたちや、私のようなおじさんにだって、学び直すことができる内容です。
この本を通じて、世界の文化や、日本と世界のつながりまで、私の暮らしは決してスタンドアローンではなく、常になにかと関わりあっていることを教えてくれています。
余談ですが、この絵本に登場するスリランカのポディマハッタヤさんは2021年新型コロナウイルスでお亡くなりなりました、ご冥福をお祈りします。
鉛筆を再考してみる
こどもの頃から親しみのある鉛筆も、その材料から私たちの手に届くまでを、あらためて考えると知らないことだらけで、文具に関わる仕事をしている大人として恥じる気持ちがこみ上げてきます。
この「いっぽんの鉛筆のむこうに」は教科書に掲載されていたようで、世代によっては懐かしさをおぼえるひともいるかもしれませんが、筆者は当時の記憶がなくて?今回が初めての出会いになりました。
私たち昭和世代は鉛筆と云えばHBが標準でしたが、近年はBや2Bが一般的になっているようで、若い世代の筆圧低下で濃い鉛筆が好まれているようです。
筆者の場合は別の意味でBや2Bの出番が増えたのは、目に衰えを感じ始めて、濃く太く書いた文字の方が読みやすく感じる様になったからではありますが、たしかに筆圧をかけずに筆記できる濃い鉛筆は楽と感じています。
いまさら鉛筆?というひとにオススメしたいBlackWing鉛筆
大人になると鉛筆を使う機会が減ったといいましたが、一部にはまた復活したというユーザーも現れ始めました。
今、注目を集めているのがBlackWingという鉛筆は一度姿を消したブランドですが、2010年にアメリカで復刻されて、その独特なデザイン(軸の後ろに平べったい消しゴムが付属している)が、文房具ファンの心をつかみ、ロフトをはじめて多くの文具店の店頭で見ることができます。
見た目のカッコイイよさもさることながら、1本400円前後という価格もまた別の意味で魅力的、トンボ鉛筆のように1ダース買いするには、ちょっと気合いが必要ですが、ばら売りもあるので、興味がある人は一度お試し下さい。
文具愛好家の考察
仕事で万年筆について記事を書く機会が多く、普段使いの筆記具が万年筆という筆者でしたが、ある日実家の整理に行った際、母が以前に使っていた大量の鉛筆が出てきて、これは使わないといけないと感じてから、鉛筆を中心にした筆記生活?が始まりました。
鉛筆の素晴らしさは、細い文字を書きたければ、細く削ればいいし、太い文字を書きたいなら芯先を削らなければいいと、1本の鉛筆で何通りの使い方ができます。
(市販の鉛筆削りに芯先の長さを調整する機能がある鉛筆削り器もあります)
また、少し時間の余裕がある時に、肥後守(小型の刀)を使って鉛筆を削っていると、なんだか心が落ち着くという効果も得られました。
1冊の絵本から、鉛筆愛が再発するという、想定外の事態に発展してしまいましたが、黒鉛や木軸で作られた鉛筆は、素朴で地球の営みを感じる事ができる筆記具だとあらためて教えられた気がしています。
Amazonで購入できる「いっぽんの鉛筆のむこうに」
BlackWing
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