創業100年を越える老舗文具店・弘前市の平山萬年堂〜全国文具店紀行〜[レポート]
創業100年を越える老舗文具店・弘前市の平山萬年堂〜全国文具店紀行〜堂
平山萬年堂
青森県弘前市にある平山萬年堂さんは、2024年で創業111年目をを迎える老舗の文具店です。
銀座伊東屋さんや、神戸ナガサワ文具センターさん、岡山のうさぎやさんなど、多くの支店を持つ文具店でもなければ、ハンズやロフトのような全国展開をしているお店はありません。
ひたすら地元弘前に根付いて、弘前の街と人と共に歩んできた街の文具店です。
万年筆インク紀行
大きな宣伝やPR活動を行っていないために、「平山萬年堂」と聞いてもピンとこない人が大半を占めるかと思いますが、万年筆ファンや万年筆インクファンなら、「おや、あのお店?」と気付くひといるはずです。
ボク自身、ナガサワ文具センターさんが主催した「全国万年筆インク紀行」というイベントで、青森県弘前のご当地インクを販売するお店として知ったのがきっかけでした。
そんな経緯もあって、いつか訊ねて見たい(と思っていても関西から青森ですからね..…とおい)お店のひとつになっていた平山萬年堂さんに、今回お邪魔する機会にめぐまれました。
弘前の老舗・平山萬年堂
お店の構えは、老舗に相応しい趣のある店舗で、間口はさほど広くはありませんが、売り場この奥へと長くつづきます。
地元と共に歩んできたお店だけに、文房具の品揃えは一般的な「事務用品」から、先に述べたように、高級筆記具や平山萬年堂オリジナル万年筆インクなどが並び、コアな文具ファンのは心くすぐられる内容です。
平山萬年堂さんは、JR弘前駅から徒歩なら20分程度?冬季の場合は積雪があるので、ちょっと時間は読みづらいのですが、駅前から100円循環バスが日中(10時頃から17時まで)10分間隔で運行されているので、こちらを利用するのが便利です。
最寄りはパークホテル前で下車すぐ右手です。
オリジナル万年筆
平山萬年堂さんは弘前で開業したのは1913年、カスタム74やデジモ(キャップレス万年筆)で知られるパイロットコーポレーションの創業は1918年、#3376センリュリーで知られるプラチナ万年筆が1919年の創業、セーラー万年筆の前身である阪田製作所が広島県呉市に創業したのが1911年ということなので、まだまだ日本製の万年筆が市場に行き渡る以前から、SAKURA万年筆のブランドでハンドメイドの万年筆の製造と販売を行っていたいうのですから、これは驚きです。
さすがに稼働こそしていませんが、店舗の奥には当時の轆轤(ろくろ)がいまも残っているそうで、これはちょっと見て見たかった。今回が初対面だったので、そんな無理は言えませんが、もう少し仲良くなれたら見てもらいたいなと思います。
オリジナル万年筆インク
今の文具業界で人気を集めている万年筆インク、神戸のナガサワ文具センターが2007年に「KobeINK物語」を発売して以来、そのブームは日本だけでなく世界にも広がり、市場に流通している種類だけでも2000種と3000種ともいわれています。
平山萬年堂さんでも、早い時点からオリジナル万年筆インク(ご当地インク)を、セーラー万年筆と共同で開発、弘前に相応しいインクを多数販売しています。
オリジナルガラスペン
さらに、近年ガラスペンにも着手して、オリジナルガラスペンを地元のガラス工房「北洋硝子」さんとコラボした「りんごガラスペン」を販売しています。
尻軸には青森の名産品りんごのカタチをあしらった可愛らしいデザインと、ガラスペンの側面を一部フラット加工したことで、机の上に置いても転がりにくいといった機能も備えています。
従来のガラスペンの軸はほぼ丸い形状をしていて、ちょっと気を抜くと机の下まで一気に転がり落ちてしますタイプがほとんどで、ペントレイとセットでの運用が必要でしたが、平山萬年堂さんのガラスペンはその心配がありません。
また、北洋硝子さんというのは、伝統工芸津軽びいどろを今に伝える会社で、近年ではスターバックスコーヒーのJIMOTO Madeシリーズ青森限定の「津軽びいどろAOMORI」グラスを作っているメーカーとしても知られて、地元でも注目をあつめている企業です。
筆の書き心地を再現したガラスペン
「りんごガラスペン」には細字と細字/ペン先筆という2タイプがラインナップに並びます。
通常のガラスペンは、均一した線で筆記する筆記具ですが、この「細字/ペン先筆」は1本のガラスペンでありながら、まるで筆で書いたように字幅が異なる筆記を可能にしています。こんなユニークなガラスペンなのにあまり知られていないのは、4代目店主平山幸一さんがあまり宣伝活動に関心がない?のか、PR戦略は展開していない様子です。
なのに、こんなのBlogで書いていいのか?という不安もありますが、書いていいよと了解を得ているので書いちゃいますが(^_^;)
ペン先筆開発秘話
どうして、こんなペン先を思いついたのか?
実は、北洋硝子さんの失敗作から生まれた「ペン先筆」だそうです。
北洋硝子さんは数多くの硝子工芸品を作ってきた会社ですが、ガラスペンは初めてのこと、いくつかの試作の途中でやはり失敗というのも出てきます。
その一本に目をつけた平山幸一さんが、これっておもしろいと思わない?
というところから、筆の書き心地をガラスペンに求めて完成したのが、現在店頭に並んでいる「細字/ペン先筆」です。
あまり知られていないと書きましたが、ボクが訪れた時に上海からやって来たという女性が、スマートフォンの写真を見せながら「I’ll Take it」といったかどうかは聞き取れませんでしたが、このガラスペンとお店のオリジナル万年筆インクを買って笑顔で店を出て行く光景に出くわしました。
思う以上に海外のファンの間ではすでに人気が広まりつつあるのかもしれません。
せっかく、弘前まで来たのだからオリジナル万年筆インクのひとつでも買って帰ろうかと思っていたところでしたが、思わぬ逸品に出会えたことで、ボクも一本「りんごガラスペン細字/ペン先筆」を買って帰ることにしました。
文具・旅行ライターの考察
青森県弘前市といえば、弘前城の桜祭りで有名ですが、じつはそれ以外に有名な観光コンテンツが思い浮かばない土地です。
でも、今回の平山萬年堂さんという超がつくほどの老舗文具店の存在をしってから、「弘前」で検索をしてみるといろんな見所がみつかります。
スターバックスコーヒー弘前公園前店は、旧陸軍師団長官舎を改装してオープンした店舗で有形文化財にも指定されているお店で、これも立派な観光コンテンツです。
さらにこの近くには、旧弘前市立図書館が記念館として一般公開されて、グルメ女子にはたまらない「アップルパイ」のお店が市内中にあるのも、りんごの出荷日本一の青森県ならではお話しかもしれません。
文具ファンには、平山萬年堂さんだけでも、弘前は訪れる価値のある土地ですが、ほかの観光コンテンツと合わせて、ぜひ楽しんで欲しい青森県弘前の街です。
平山萬年堂
住所:青森県弘前市中土手町105
電話:0172-32-0880
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