現代のシステム手帳についての考察[コラム]
21世紀型のシステム手帳について考える
システム手帳が登場したのは1985年頃、Knoxbrain(ノックスブレイン)やASHFORD(アシュフォード)などのブランドがバインダー式の革手帳を発売して、ブームとなった時代から30余年が経ち、いままた新しい「システム手帳」の波が訪れようといています。
旧来のシステム手帳
1980年代のシステム手帳を20世紀のシステム手帳とすると、今のムーブメントは21世紀のシステム手帳と呼んでもいいかもしれません。
バブル経済が崩壊して以降、鈍器のようなぶ厚い(これで殴られるとホントにいたかった)システム手帳を扱う文具店も少なくなり、辛うじてリフィルだけが店頭に並ぶ寂しい時期もありました。
この話を書き始めると、おそらく単行本1冊くらいの文字量になるので要約しますが、さまざまな要因があり衰退と復活があり現在に至っています。
*写真のシステム手帳は長く営業で愛用していたものですが、これよりもさらにカードカバーでぶ厚く殺傷能力の高いシステム手帳もありましたが、30年以上も前の手帳のため破損がひどく現在は残っていません。
(自分でも少し残念です)
スマートフォンの来襲
21世紀のシステム手帳といっても2001年に新しいムーブメントがいきない発生した訳ではなく、諸説あるなかで2007年アメリカで発売されたApple社初代iPhoneがその狼煙となって、翌年2008年iPhone3Gが日本で発売されて以降、一気にスマートフォンが生活の必要アイテムになり、それまで手帳で管理していた仕事あるいは個人の予定管理(スケジュール)や住所録・電話帳といった紙に記していた情報が手のひらの上の小さなデバイスにすべて収まるようになった事は、デジタルの優位性を大いに知らしめる結果になりました。
システム手帳の逆襲
ここ数年、再びシステム手帳が注目を集めるようになりました。
正確なデータがあるわけではないので、「えーーーー!」と疑問?を持つひともあるかもしれません。
ひとつの目安として、新製品が各社から数多く発売されるようになったのもその根拠のひとつ。
さらに、文具愛好家がこよなく愛する専門雑誌「趣味の文具箱」(枻出版社)が創刊されたのが2004年8月の第1号の全138ページに中にシステム手帳の記事は1ページも登場していませんが、2016年にシステム手帳にだけ特化した雑誌「システム手帳Style vol.1」が(全152ページで趣味の文具箱の創刊号よりもページ数が多い)で発売され、その人気を表しています。
ASHFORDの新旧まとめた大反撃
「システム手帳Style」が創刊された2016年に文具業界でおきたある事件、システム手帳を牽引してきた日本のシステム手帳メーカーであるASHFORDが創業30周年を記念して往年の名システム手帳「プレスコット」復刻、さらに1995年に登場した「名刺フォン」(5穴システム手帳)をマイクロ5「M5エムゴ」を新しく発売するなど、それまで停滞していた革のリングノートに再び命を吹き込みました。
また、この頃から30周年の記念イベントを積極的に開催、東京の代官山 蔦屋書店、大阪の梅田 蔦屋書店 、神戸のナガサワ文具センターでも新しいファンを集めました。
東西2大文具専門店がシステム手帳売り場を拡大
新しいニーズに応えるように、東京の老舗文具店銀座伊東屋と関西の雄神戸ナガサワ文具センター本店がシステム手帳売り場を新設拡大して、バインダーだけでなくリフィルも大量に並ぶ売り場になりました。
また、店舗では各システム手帳メーカーとコラボした限定モデルや、原稿用紙の老舗満寿屋、大和出版印刷、山本紙業など紙の専門メーカーとコララボした店舗オリジナルのリフィルを販売するなど、ファンを魅了するアイテムが並びます。
システム手帳女性ユーザーが拡大
マイクロ5の登場は、これまで男性のビジネスアイテムだったシステム手帳を一気に、女性ユーザーまで取り込むアイテムに進化した事は、ASHFORDの思惑通りだったのか、はたまた嬉しい誤算だったのか?はさておき、今1番女性ユーザーの支持を集めているのが2010年に開発された新しいフォーマットHBW×A5(エイチ・ビー・カケル・エーゴ)の規格です。
バイブルサイズでは筆記面積が少なすぎる、でもA5サイズだとちょっと大きすぎるという、ユーザーのジレンマの解消できる規格として、H(高さ)はバイブルサイズで、W(幅)はA5サイズの「HBW×A5(エイチ・ビー・カケル・エーゴ」が生まれました。
実際に取材して驚いたのは「HBW×A5」の購入者の約9割は女性という事実、さらに2021年に東京の文具店で開催された「システム手帳サロン」でも、訪れた来場者の9割以上が女性客ということで、もはやシステム手帳=男のビジネスツールと思い込んでいる世の中のお父さん方は、考えた方を改める必要がありようです。
まとめてみると
「システム手帳Style」という雑誌が創刊されてた2016年前後(あらたな動きはこれ以前から兆候はありました)から、現在のシステム手帳人気を21世紀型とすると、20世紀型システム手帳との大きな違いは、中に綴じるリフィルの変化、つまりスケジュールや住所録の機能がスマートフォンに移行したことで、システム手帳本体に綴じる必要がなくなり、メモやTodo、アイデアを記すといったノートブック本来の機能を回帰した形になり、今必要な情報をだけを持ち歩くためのツールへと進化、さらにビジネスだけに囚われず女性にもユーザーが拡大して、よりプライベートを充実させる「システム手帳」に生まれ変わった、そんな気がする現在のシステム手帳です。
補足
「システム手帳Style」創刊時は枻出版社から発売されていましたが、現在はヘリテイジから刊行されています。
参照「システム手帳Style vol.1」「趣味の文具箱 vol.1」
*呼称について、「システム手帳」という古い言葉のイメージからから脱却し新しいユーザーのために、ASHFORDでは「ジャケット」DesignphilのPLOTTERでは「レザーバインダー」と呼称していますが、本記事では「システム手帳」で統一しています。
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