万年筆のペン先を自分好みの書き味にカスタマイズしてくれるペン職人のお話[文具]
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万年筆
万年筆のペン先を自分好みの書き味にカスタマイズ?
きょうは万年筆のペン先をカスタマイズするというとてもマニアックなお話し
万年筆という筆記具が、ある意味とても趣味的な存在として位置づけられるのは、高価な筆記具であることに加えて、使用する人間のクセがペン先に反映されるといったことに起因しているかもしれません。
ペン先の調整
購入したばかりの万年筆が自分に馴染むようになるには最低でも数年の時間が必要になりますが、ある程度自分のクセを自分で認識できる人や、万年筆での筆記でこうありたいといった希望を持っている人に、嬉しいサービスが「ペン先のカスタマイズ」です。
万年筆の筆記も、他の筆記具と同様に正しい持ち方というのがあり、正しい持ち方が1番書きやすいように作られていています。
万年筆の専門雑誌「趣味の文具箱」(ヘリテイジ出版)によれば、基本の筆記角度は約60度(+-のキャパはあります)とあります。
このほか、筆圧は左右均等にするとか、万年筆の持ち方なども解説してあるので、機会があればぜひ参考にして欲しい雑誌です。
とは、すでに何十年様々な筆記具を使ってきた人ほど、知らず知らずに自分の書きクセというのが出てきます。
ペン先のカスタマイズ(調整)では、ペン先職人やペンドクターの方に診ていただき、相談しながら自分のクセにぴったりの万年筆にしてくれます。
この調整は、万年筆の専門店であれば(有償・無償)で行ってくれます。
また、日本には数人ですが、ペン先職人と呼ばれるプロフェッショナルもいて、イベント等で調整を行ってくれます。
万年筆の神様
さらにその上をいく「カスタマイズ」と呼ばれる高度なペン先加工を施してくれるプロも存在します。その人がTHE nib SHAPER(万年筆ペン先職人)の長原幸夫さんです。
長原幸夫さんはお父様長原宣義さんの代からセーラー万年筆株式会社でペン先加工のプロフェッショナルとして、特殊なペン先を手掛け、日本だけでなく世界の万年筆ファンから神様として尊敬を集めています。
セーラー万年筆株式会社を定年退職後の2020年2月からフリーランスとして、全国の文具店やペンショーなどのイベント会場でペン調整を行っています。
ペン先のカスタマイズ
その神様の手にかかると、同じペン先の万年筆がまったく違う書き心地のペン先に生まれ変わります。
元になったのは、プラチナ万年筆の#3776センチュリーという一般的なモデルです。
ただし字幅はC(コース)という極太のペン先で、仕事で原稿を書く際にすらすらと書けるので、たいそうお気に入りの字幅です。
今回このC(コース)を「小太刀」という特殊ペン先に、ある意味改造?してもらいました。
この「小太刀」の元になっているのは、先代長原宣義さんがつくった特殊ペン先の「長刀研ぎ」
の一種で、日本の漢字文化にある「トメ」「ハライ」といった表現がしやすく、タテに書くと細い線、横に書くと自然に太い線になるといった特徴を持っています。
「小太刀」は元は別のペン先から改造するために生まれた言葉と推測されますが、ルーペで拡大しなければ見えない小さなペン先を見事に再現してくれました。
ペン先比較
長原幸夫さんに調整してもらったペン先がどんな風にカスタマイズされたのか拡大写真で比較してみると?
〇こちらはまったく手がついていないプラチナ万年筆#3776センチュリー、字幅はC(コース)
〇万年筆の神様、長原幸夫さんの手にかかると、あの小さなペン先が素人目でも形状が変わっていることがわかります。
先端がとがっている点も含めて「小太刀」とは上手いネーミングのよう思います。
このカスタマイズには、C(コース)のような太い字幅のペン先が条件で、EF(極細)などの細字からは物理的にはできません。
3種類の字幅表現ができるペン先「小太刀」
実際に筆記してみると、通常も筆記でも紙との滑りがより滑らかで、横に引いたときには極太、縦にひくとやや太字、ペン先の上下を逆にすると細字という表現が可能なペン先になりました。
編集後記
この日は神戸ナガサワ文具センター本店でのイベントで調整をお願いしました。
プラチナ万年筆の#3776のB(太字)を持っていなかったので、長原幸夫さんに調整をお願いするつもりいたのですが、相談したとこと「小太刀」を薦めていただき、このカスタマイズになりました。
すでにC(コース)を2本持っていた私としては、この「小太刀」は実に面白い存在で、それでいて、しっかりとした筆記ができる〔当たり前ですが)とあってしばらくやみつきになりそうな予感です。
たとえば、この「小太刀」がしっくりこなけてばB(太字)に変更する事は可能なので、無駄になる心配はありません。
基本、有償サービスなので一般のかたに「ぜひどうぞ」とはオススメできませんが、こういったカスタマイズもできのが万年筆の魅力のひとつとして記憶に留めていただければ、今回の記事に意味があったと思えます。
長原幸夫の「THE nib SHAPER」
今回使用した万年筆
プラチナ万年筆 #3776センチュリー 字幅C(コース)極太
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